いまここに見えないものを 思い浮かべる 余白を 写す

特集上映「映像作家・小森はるか作品集 2011-2020」

the place named、砂粒をひろう———Kさんの話していたこととさみしさについて、米崎町りんご農家の記録、波のした、土のうえ、息の跡、砂連尾理 ダンス公演「猿とモルターレ」映像記録、根をほぐす、空に聞く、かげを拾う

[東京]ポレポレ東中野にて3月6日(土)‐3月19日(金)開催

企画:東風+ポレポレ東中野 配給:東風
協力:瀬尾夏美 砂連尾理 カサマフィルム愛知県美術館せんだいメディアテーク 3月11にちをわすれないためにセンター

program

最新作『二重のまち/交代地のうたを編む』公開にあわせて、
劇場初上映作品を含む全9作品〈7プログラム〉を一挙上映。

A
the place named

the place named

2012年/36分/監督・脚本・撮影:小森はるか 録音:鈴尾啓太、菅野慧 舞台演出・脚本:原麻理子 舞台戯曲:「わが町」ソーントン・ワイルダー 作、額田やえ子 訳 出演:原麻理子、遠藤麻衣、栗原たづ、西山朱子、花戸祐介、深堀見帆、宮永聡

ソーントン・ワイルダーの戯曲「わが町」をもとに、田舎町で暮らす少女の一日と「わが町」第3幕を稽古する劇団員たちが交互に描かれる。死者が生者の世界について語る台詞を練習する声が、田舎町の日常に重なり、演じる役者自身にも投影される。脚本段階から出演者とともに制作。

A
砂粒をひろう—Kさんの話していたこととさみしさについて
劇場初公開

砂粒をひろう—Kさんの話していたこととさみしさについて

2013年/23分/制作:小森はるか+瀬尾夏美 テキスト:瀬尾夏美 撮影・編集:小森はるか

2011年4月、大津波から間もない陸前高田のまちで出会ったKさん。小森と瀬尾は、その後約一年間、彼女の言葉とその傍らにあった風景を記録していた。小森の映像が当時の状況や語りをありのままに伝え、瀬尾のテキストとドローイングはその場の会話や時間を咀嚼するなかで生まれてくる。二つの視点をダブルスクリーンで投影したインスタレーション作品を、シングル版に編集し上映する。

B
米崎町りんご農家の記録
劇場初公開

米崎町りんご農家の記録

2013年/42分/撮影・編集:小森はるか
※「3がつ11にちをわすれないためにセンター」の参加者として制作・発表

陸前高田市で瓦礫撤去のボランティア活動に参加した際に小森と瀬尾が出会った、りんご農家のご夫婦との記録。おふたりは津波の被害を受けた家の修復を待ちながら、家の脇に残った納屋を仮住まいし、裏山のりんご畑を守りながら暮らしを続けていた。つぎ木や摘花作業の様子を小森のキャメラが丁寧に写す。

B
根をほぐす
劇場初公開

根をほぐす

2018年/18分/撮影・編集:小森はるか
※「3がつ11にちをわすれないためにセンター」の参加者として制作・発表

『息の跡』の主人公である陸前高田で種苗店を営む佐藤貞一さんが、2016年に高台へ店を新設するため、震災後に続けてきた店舗を自らの手で解体していく様を記録した短編。『息の跡』のエンドクレジットに挿入された場面の素材より再編集をした。

C
波のした、土のうえ

波のした、土のうえ

2014年/68分/制作:小森はるか+瀬尾夏美 出演:阿部裕美、鈴木正春、紺野勝代、瀬尾夏美 テキスト:瀬尾夏美 撮影・編集:小森はるか

2014年、陸前高田ではいよいよ復興工事が本格化。風景が塗り替えられる前に、まちの人たちと一緒にかつての町跡を歩き、この場所でこそ思い出される記憶や、いま抱えている感情などについて、話を聞かせてもらう。そこから瀬尾が物語を書き、ご本人とともに訂正や書き換えを行なったうえで朗読をしてもらい、小森がその声を頼りにしながら、この町の風景や時間を重ねるようにして映像を編んでいく。

D
息の跡

息の跡

2016年/93分/製作:カサマフィルム+小森はるか 監督・撮影・編集:小森はるか 編集:秦岳志 整音:川上拓也 特別協力:瀬尾夏美 プロデューサー:長倉徳生、秦岳志

陸前高田の荒涼とした大地に、ぽつんとたたずむ一軒の種苗店「佐藤たね屋」。津波で自宅兼店舗を流された佐藤貞一さんは、その跡地に自力でプレハブを建て、営業を再開した。また佐藤さんは、みずからの体験を独習した英語で綴り自費出版していた。記憶と記録のあわい。かすかな痕跡とぬくもりを映画は写す。

公式サイト
E
砂連尾理 ダンス公演「猿とモルターレ」映像記録
劇場初公開

砂連尾理 ダンス公演
「猿とモルターレ」映像記録

2017年/110分/制作:「猿とモルターレ」アーカイブ・プロジェクト 振付・演出:砂連尾理 出演:垣尾優、伴戸千雅子、磯島未来、砂連尾理、藤原康弘(照明)、西川文章(音)、追手門学院高校演劇部ほか市民ワークショップ参加者 テキスト:瀬尾夏美「二重のまち」 ドラマ・ティーチャー:いしいみちこ マネージメント:内山幸子 撮影:小森はるか、酒井耕 編集:小森はるか、中村大地

振付家・ダンサーの砂連尾理が震災後に避難所生活する人びととの交流を通じて、非常に困難な状況を経験した人びとの「命懸けの跳躍(=サルト・モルターレ)」を考察し、未来に向けて生きる私たちのサルト・モルターレを模索したパフォーマンス作品「猿とモルターレ」。2017年3月に大阪・茨木市市民総合センターで上演された公演の記録。

F
空に聞く

空に聞く

2018年/73分/監督・撮影・編集:小森はるか 撮影・編集・録音・整音:福原悠介 特別協力:瀬尾夏美 企画:愛知芸術文化センター 制作:愛知県美術館 エグゼクティブ・プロデューサー:越後谷卓司

東日本大震災の後、約三年半にわたり「陸前高田災害FM」のパーソナリティを務めた阿部裕美さん。地域の人びとの記憶や思いに寄り添い、いくつもの声をラジオを通じて届ける日々を、キャメラは親密な距離で記録した。津波で流された町の再建は着々と進み、嵩上げされた台地に新しい町が造成されていく光景が幾重にも折り重なっていく。

公式サイト
G
かげを拾う
劇場初公開

かげを拾う

2021年/70分(予定)/製作:せんだいメディアテーク 撮影・編集:小森はるか 録音:福原悠介

仙台在住の美術作家・青野文昭さんの制作風景を追ったドキュメンタリー。せんだいメディアテークでの個展にむけて青野さんが取り組んでいた、仙台市八木山と岩手県宮古市を舞台とした新作制作の中で、「拾う」「なおす」行為にキャメラを向けた。「青野文昭 ものの, ねむり, 越路山, こえ」の関連企画として本作を上映。

profile

小森はるか

Komori Haruka

1989年静岡県生まれ。映像作家。映画美学校12期フィクション初等科修了。東京藝術大学美術学部先端芸術表現科卒業、同大学院修士課程修了。2011年に、ボランティアとして東北沿岸地域を訪れたことをきっかけに、画家で作家の瀬尾夏美と共にアートユニット「小森はるか+瀬尾夏美」での活動を開始。翌2012年、岩手県陸前高田市に拠点を移し、人々の語り、暮らし、風景の記録をテーマに制作を続ける。2015年、仙台に拠点を移し、東北で活動する仲間とともに記録を受け渡すための表現をつくる組織「一般社団法人NOOK」を設立。2015年、長編映画第一作となる『息の跡』が山形国際ドキュメンタリー映画祭2015で上映され、2017年に劇場公開。2018年に製作した『空に聞く』は、あいちトリエンナーレ2019、山形国際ドキュメンタリー映画祭2019、第12回恵比寿映像祭で上映され、2020年に劇場公開。2021年、「小森はるか+瀬尾夏美」の最新映画『二重のまち/交代地のうたを編む』を劇場公開。

review

希望の再生

ピーター・キュリー(人類学者・ミュージシャン)

翻訳:三浦哲哉

『息の跡』と『空に聞く』を見て深く印象づけられた。
忘れようにも忘れられない悲劇的なできごとのあと、共同体における死者の弔いや生者の心の傷の回復にかかわることになった語り部の姿をどちらの作品も追うのだが、その姿勢がすばらしい。ラジオ・パーソナリティの阿部、種屋で著述家の佐藤は、いたって謙虚な方々だが、市井の偉大な英雄、あるいは「名もなき聖人」だ。地震と津波の前はけっして予想していなかっただろう社会的呼びかけに応じ、すすんで身を捧げた。二人が自分たちに課したのは、3月11日以降に陸前高田で「何が起きたか」の単なる記録以上のことだった。二人の語りにおいて事実とデータは大事だが、しかし最も重要視されるのは、この街の共同体的な経験であり、その精神性が継承されてゆくことだ。

ラジオ放送、街の住民への聞き取り、震災記録の執筆、外国語への翻訳、公共空間に向けて語ること、これら活動を通して阿部と佐藤は、街の住民たちだけでなくその外部の人間たちも巻き込んで、記憶し、悼み、癒やし、ふたたび希望を持つことを可能にする(佐藤の奮闘は、言葉と国境の壁さえも乗り越える)。国家には、こうした精神的な仕事はなしえない。東京の官僚たちは、東北の経済とインフラストラクチャーに再投資することはできるが、住民たちが前を向いて進むべくその魂を鼓舞することはできない。未来への希望をふたたび抱くためには、街のひとびと──とくにこの場合は共同体の中で体を張って労働する個々人──の力が必要不可欠なのだ。

映画作家もまた同様に、希望の再生というこの活動に加担する一員である。この女性監督は、ただ「記録者を記録」しているだけではない。語り部の持つ儀礼的で祭祀的な力を、彼女自身が用い、体現する。キャリアを開始したばかりだというのに、驚くべき力量というほかはない。題材の深刻さにもかかわらず、瞠目すべき軽やかさ、題材処理の手際の良さを備えている。とりわけすばらしいのは、人物を捉えるときの小森の注意深さときめ細やかな配慮だ──長い時間をかけ、信頼の上に築かれた真の関係性の証しだろう。次回作も楽しみでならない。

Theater

開催劇場

東京 | ポレポレ東中野
3月6日(土)~3月19日(金)

電話:03-3371-0088
公式サイト
タイムテーブル&詳細をみる

タイムテーブル

※時刻は開映時間です。

3月6日(土)
12:30 二重のまち 14:30 C波のした、土のうえ 16:00 D息の跡
3月7日(日)
12:30 二重のまち 14:30 Gかげを拾う 16:10 F空に聞く
3月8日(月)
12:30 二重のまち 14:10 C波のした、土のうえ 15:40 E猿とモルターレ
3月9日(火)
12:30 二重のまち 14:30 Bりんご農家+根をほぐす 16:00 Aplace+砂粒をひろう
3月10日(水)
12:30 二重のまち 14:10 E猿とモルターレ 16:20 Gかげを拾う
3月11日(木)
12:30 二重のまち 14:30 F空に聞く 16:10 C波のした、土のうえ
3月12日(金)
12:30 二重のまち 14:30 C波のした、土のうえ 16:00 Aplace+砂粒をひろう
3月13日(土)
12:30 二重のまち 14:30 Bりんご農家+根をほぐす 16:00 D息の跡
3月14日(日)
12:30 二重のまち 14:30 Aplace+砂粒をひろう 16:00 Bりんご農家+根をほぐす
3月15日(月)
12:30 二重のまち 14:30 D息の跡 16:20 Gかげを拾う
3月16日(火)
12:30 二重のまち 14:30 Aplace+砂粒をひろう 16:00 D息の跡
3月17日(水)
12:30 二重のまち 14:10 Bりんご農家+根をほぐす 15:40 E猿とモルターレ
3月18日(木)
12:30 二重のまち 14:30 F空に聞く 16:10 Gかげを拾う
3月19日(金)
12:30 二重のまち 14:30 D息の跡 16:20 C波のした、土のうえ
フリーパス=7,500円数量限定販売
当日一般:1,500円/大・専・シニア:1,200円/高・中・障害者:1,000円
(すべて税込)
※『空に聞く』=当日一般:1,800円
※『二重のまち/交代地のうたを編む』の半券提示で、当日一般より200円割引
愛知 | 名古屋シネマテーク
3月20日(土)~3月26日(金)

電話:052-733-3959
公式サイト
詳細はこちら
大阪 | シネ・ヌーヴォ
4月3日(土)より開催

電話:06-6582-1416
公式サイト
京都 | 出町座
4月2日(金)より開催

電話:075-203-9862
公式サイト
広島 | 横川シネマ
5月1日(土)~5月14日(金)

電話:082-231-1001
公式サイト