空に聞く空に聞く

『息の跡』小森はるか監督最新作『息の跡』小森はるか監督最新作

忘れたとかじゃなくて、ちょっと前を見るようになった。

かつての町の上に新しい町が作られていく。震災後の陸前高田でいくつもの声を届けたあるラジオ・パーソナリティの物語。

  • あいちトリエンナーレ2019〈映像プログラム〉
  • 山形国際ドキュメンタリー映画祭2019〈日本プログラム〉
  • 第12回恵比寿映像祭

監督・撮影・編集:小森はるか撮影・編集・録音・整音:福原悠介特別協力:瀬尾夏美
企画:愛知芸術文化センター制作:愛知県美術館
エグゼクティブ・プロデューサー:越後谷卓司配給:東風

2018年/日本/73分/DCP
©KOMORI HARUKA

11月21日(土)より、ポレポレ東中野にてロードショー
他全国順次公開

空から見たら私たち、 どんなふうに見えているのかな?空から見たら私たち、 どんなふうに見えているのかな?

東日本大震災の後、約三年半にわたり「陸前高田災害FM」のパーソナリティを務めた阿部裕美さん。
地域の人びとの記憶や思いに寄り添い、いくつもの声をラジオを通じて届ける日々を、キャメラは親密な距離で記録した。
津波で流された町の再建は着々と進み、嵩上げされた台地に新しい町が造成されていく光景が幾重にも折り重なっていく。
失われていく何かと、これから出会う何か。
時間が流れ、阿部さんは言う——忘れたとかじゃなくて、ちょっと前を見るようになった。

監督は、震災後のボランティアをきっかけに東北に移り住み、刻一刻と変化する町の風景と出会った人びとの営みを記録してきた映像作家の小森はるか。傑作『息の跡』と並行して撮影が行われた本作は、映像表現の新たな可能性を切り拓くことを目的としたプロジェクト「愛知芸術文化センター・愛知県美術館オリジナル映像作品」として完成。あいちトリエンナーレ、山形国際ドキュメンタリー映画祭、恵比寿映像祭と立て続けに上映され、先鋭的なプログラムの中でもひときわ大きな反響を呼んだ。

Staff

小森はるかの写真

監督・撮影・編集小森はるか(こもり・はるか)

1989年静岡県生まれ。映像作家。映画美学校12期フィクション初等科修了。東京藝術大学美術学部先端芸術表現科卒業、同大学院修士課程修了。2011年に、ボランティアとして東北沿岸地域を訪れたことをきっかけに、画家で作家の瀬尾夏美と共にアートユニット「小森はるか+瀬尾夏美」での活動を開始。翌2012年、岩手県陸前高田市に拠点を移し、人々の語り、暮らし、風景の記録をテーマに制作を続ける。2015年、仙台に拠点を移し、東北で活動する仲間とともに記録を受け渡すための表現をつくる組織「一般社団法人NOOK」を設立。2015年、長編映画第一作となる『息の跡』が山形国際ドキュメンタリー映画祭2015で上映され、2017年に劇場公開される。

Filmography

2009
oldmaid(13分/脚本・監督)
2012
the place named(36分/脚本・監督・撮影)
2013
砂粒をひろう———Kさんの話していたことと、さみしさについて(23分/撮影・編集 制作:小森はるか+瀬尾夏美)
2014
波のした、土のうえ(68分/撮影・編集 制作:小森はるか+瀬尾夏美)
2016
息の跡(93分/監督・撮影・編集 製作:カサマフィルム+小森はるか)
2018
根をほぐす(18分/撮影・編集)
空に聞く(73分/監督・撮影・編集 制作:愛知県美術館)
2019
二重のまち/交代地のうたを編む(79分/撮影・編集 制作:小森はるか+瀬尾夏美)
かげを拾う(73分/撮影・編集 制作:せんだいメディアテーク)

撮影・編集・録音・整音福原悠介(ふくはら・ゆうすけ)

1983年宮城県仙台市生まれ。映像作家。アートプロジェクトや民話語りなど、地域の文化を映像で記録するほか、「対話」をテーマとしたワークショップをおこなう。主な監督作に『家にあるひと』(2019)、『飯舘村に帰る』(2019)など。また、小森はるか監督『空に聞く』(2018)、小森はるか+瀬尾夏美の『二重のまち/交代地のうたを編む』(2019)などに参加。記録集「セントラル劇場でみた一本の映画」を企画・編集。

Comments

※五十音順/敬称略

天と地はひと繋がりで、その層の中にわたしたちは生きている。
阿部さんの優しい声で人々の記憶がたぐられ、凛と柔らかな凧のごとく風に乗り、上空に響く。
勝手口から見える風景にこんなにも胸掴まれるのは、そこにあったものを、これからできるものを、それらを日常の中で見続けるであろう阿部さんの姿を、想像するからだろうか。

小田香映画作家/『セノーテ』『鉱 ARAGANE』

声高に、多くは語らないけれど、被災のつらさと涙がとても静かに伝わってきました。そして、それは押してくる現実の暮らしの中で、まるで何事もなかったかのように、その人の心に積み重なっているのでしょうね。こんなことをこんなふうに物語る人がいるのだと、私は湧いてくる感動を覚えました。

小野和子民話採訪者

陸前高田のあるひとときの風景、そこに生きるひとりひとりの声。津波にさらわれてもなおその地に花を咲かせる水仙やホタルブクロのように、阿部さんのラジオや小森さんのこの映画はそれを伝えてくれる。どこまでも繋がる空を見あげ胸がいっぱいになる。

小林エリカ作家、マンガ家

ラジオを録音することを、どうしてエアチェックというのか、その言葉を知った頃は不思議だった。
もちろん今ではわかる。音声は波であり、波は振動であり、それは空気中を、エアーを伝わってゆく。
エアーは、空気とは、空のこと。私たちの真上にひろがる、いつだって見上げればそこにある、空。
Listening to the Air.
小森はるかは、まさにそのようにして、この映画を撮ったのだと思う。
そこではカメラも「彼女」の声に、じっと耳を澄ませている。

佐々木敦

「現実逃避」という言葉があるぐらいだから、僕達は常日頃、現実の問題と直面して疲弊したり、怯えたり、見て見ぬフリをしたりする。現実は平板で退屈で、時に容赦なしの災厄をも齎す。場合によっては、僕達の生の前に立ちはだかる巨大な壁のように思える事さえある。そんな現実の脅威に突き通された場所から生真面目に電波を発信する阿部裕美さんの手つきに、その現実を捉えようとする小森監督の手つきが静かに重ねられる情景に、臆病者の僕などは心底参ってしまう。現実から逃げ出す代わりに、現実を慎重に重ね合わせることの美しさが見事に定着された、その時間にしか存在し得なかった稀有な映画だ。

澁谷浩次yumbo

津波後の陸前高田の思いがけない六年九ヶ月が、一人の女性の表情と声とで点描されており、心に浸みる。
この文句なしの傑作と出会うべく劇場にかけつけ、笑い、そして涙せよ。

蓮實重彦映画評論家

ラジオの持つ「誰かがそこにいて、その人の言葉で話している」生身の気配。
それぞれの場所でそれぞれの思いを持ちながら、声をかけ合い、つながっていく人々の姿。
これまでも、これからも、声は希望。

秀島史香ラジオパーソナリティー

この映画には、失われたものと今を行き来する余白がある。安易な共感ではない、でも共に感じる時間を絶やすまいとする、ラジオとカメラのそのささやかな祈りに、思わず耳を澄ませた。

広瀬奈々子映画監督

震災後の街を見守り、再生のために身を投じる女性。その姿から途方もなく大きな何かが触知される。前作『息の跡』と本作は、おそらくビクトル・エリセ『ミツバチのささやき』『エル・スール』、いや、カール・ドライヤー『奇跡』と『ゲアトルード』のように巨大な二部作だ。

三浦哲哉映画研究者

もうたまらない。ありとあらゆるものがこんなにも豊かに溢れてみえるのはなぜだろう。手を動かすこと、ひとの話をきくこと。みなさんと小森さんがしつこくかつ軽やかにそれを繰り返すから、こんな時代のなかでもまったく新しい日々が生まれ、映るのだろうか。同時代にこの映画が作られたことがたまらなく嬉しい。

三宅唱映画監督

Theater

11月21日(土)より、ポレポレ東中野にてロードショー
他全国順次公開

ポレポレ東中野の地図

ポレポレ東中野

〒164-0003 東京都中野区東中野4-4-1ポレポレ坐ビル地下
03-3371-0088
www.mmjp.or.jp/pole2

地域 劇場名 電話番号 公開日
東京都 ポレポレ東中野 03-3371-0088 11月21日(土)より公開
神奈川県 横浜 シネマ・ジャック&ベティ 045-243-9800 順次
新潟県 シネ・ウインド 025-243-5530 順次
愛知県 名古屋シネマテーク 052-733-3959 12月上旬より公開
大阪府 シネ・ヌーヴォ 06-6582-1416 12月12日(土)より公開
京都府 出町座 075-203-9862 12月11日(金)より公開
兵庫県 元町映画館 078-366-2636 順次
広島県 横川シネマ 082-231-1001 順次
全国共通特別鑑賞券
1,300円(税込)発売中
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